エンタメ「西郷どん」を知る(その1)財政改革を果たした薩摩藩

Posted:2018年01月10日
 

 

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1月7日から、明治維新の立役者の一人として知られる西郷隆盛が主人公のNHK大河ドラマ「西郷どん(せごどん)」が始まりました。

大河ドラマ57作目となる本作は、今年が明治維新から150年となることを記念して、林真理子さん原作の「西郷どん!」を実写化。脚本は「ハケンの品格」、「Doctor-X外科医・大門未知子」を手がけた中園ミホさんが担当しています。

 

主演の西郷吉之助(隆盛)役は、大河ドラマ初出演にして初主演の鈴木亮平さん。

薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(小吉、吉之助)の愚直な姿に、薩摩藩主・島津斉彬(なりあきら)が目を留め、西郷は斉彬の密命を担い、江戸へ京都へと奔走。

勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、揺るぎなき革命家へと覚醒し、やがて明治維新を成し遂げていくドラマです。

 

「西郷どん」を知る!シリーズ第1弾は、当時の世界情勢と時代背景についておさらいします。

 

 

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18世紀後半にイギリスで始まった産業革命は、周辺のヨーロッパ諸国やアメリカへと広がっていきました。工業生産力と軍事力を蓄えた欧米諸国は、市場の拡大を求めてアジアに進出していきます。

 

1840年、アヘンの密売をめぐりイギリスと清国(現在の中国)の間で戦争が始まりました。

当時、イギリスは清国からお茶や絹などを輸入していましたが、イギリスの輸出品は清国では売れず、イギリスは大変な貿易赤字に陥っていました。そこで、植民地のインドでアヘンを作らせて清国へ輸出し、貿易の均衡を図ろうとしました。

国内にアヘンが蔓延した清国は、アヘンの取締りに踏み切ります。それでも密輸入はやまず、清国は広州からイギリス人を追い出そうとしました。

このことが原因でイギリスは艦隊を派遣、その後2年間に及んだイギリスと清国の戦争は、1942年、清国の敗北で終結し、南京条約を締結しました。結果、香港はイギリスに割譲され、上海、広東など5港を開港しました。

 

このことが、オランダを通じて鎖国政策を採っていた日本にも伝えられます。

日本は江戸末期、たびたび外国船が日本の沿岸に見られるようになっていた頃です。

江戸幕府は危機感を抱き、1842年、それまでの方針を転換、「異国船打払令」を緩和して、「天保の薪水給与令」を発令し、漂着した外国船に食料や燃料などを与えることにしました。

当時、長崎の出島で清国以外に唯一貿易を許されていたオランダは、幕府に開国するよう進言しましたが、鎖国政策は日本の祖法であるとして開国を拒否しました。

 

 

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琉球(沖縄)も管理下に置き、日本最南端の薩摩藩は、地の利を生かして、幕府には内緒で清国と密貿易をしながら、薩摩藩家老・調所広郷(ずしょ ひろさと)の指導のもと、藩の財政・農政・軍制改革に取り組んでいました。

江戸後期、諸藩はどこも財政赤字に苦しんでいました。薩摩藩も500万両にも及ぶ膨大な借金を抱えて破綻寸前となっていましたが、債務を棚上げにして、債権者の商人に密貿易の権利を与え、大島・徳之島などから取れる砂糖の専売制を行うなどして、財政を回復させていきました。

アヘン戦争が勃発する1840年頃には薩摩藩の金蔵には250万両の蓄えが出来る程にまで回復していたといわれています。

このことが、その後の薩摩藩を雄藩に押し上げる原動力となりました。

このとき島津斉彬は藩主になる前の31歳、西郷隆盛は12歳でした。

 

当時の薩摩藩の藩主は第10代藩主・島津斉興(なりおき・斉彬の父)で、通常は元服を過ぎた息子に家督を譲るのですが、斉彬が30歳を過ぎてもなお斉興は実権を握り続けます。

これは、洋学や政治に多額の資金を注ぎ込んで財政を悪化させた祖父・島津重豪に影響をうけた斉彬が藩主になれば、ようやく黒字化した薩摩藩の財政を再び悪化させるのではと恐れていたからだといわれています。

 

一方で、壮年の斉彬にいつまで経っても家督相続せず、倹約ばかりを強いる斉興へ反発を感じる若手武士たちもたくさんいました。

かくして、薩摩藩では、藩主・島津斉興の後継者として側室の子・島津久光を藩主にしようとする一派と嫡子・島津斉彬の藩主襲封を願う家臣の対立によって、お由羅騒動(おゆらそうどう)が起こります。

 

 

▽大河ドラマ「西郷どん」相関図

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