アジア<QBCアジア支局だより>なかなか中国語学習が進まない理由は「表意文字」

Posted:2017年09月28日

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日本人が、海外(欧米圏、中華圏)の映像コンテンツのオリジナル版を、日本語の吹き替え等を介さず、直接視聴する際に、予備知識としてわきまえておくべき基本的な「言語」の前提がある。

 

それは、英語は「表音文字」、中国語は「表意文字」という前提で、多くの日本人が案外見落としている点である。二つの区分によって、それぞれの言語圏の映像の「見え方」や「学び方」は違うものとなる。英語圏は「表音文字」のため、基本的な放映画面では、英語字幕は表記されない。それは、話している言葉に、字幕をアシストしたところで、現地人にとって意味を成さないためである。しかし、中華圏の多くの番組は、漢字字幕(中国大陸では簡体字、台湾、香港では繁体字)が表記される。これは発話している音が直接、文字を表現しないため、また、同一漢字でも地方によって方言や発音の癖が表れる。また、「音声のみ」だと誤解が生じやすいため、字幕は「音声をアシスト」するために使用されている。日本の字幕使用は「出演者の言葉を強調するため」という意図があるが、中華圏では、全国放送や衛星放送など視聴エリアの広い番組は、ナレーションや、セリフ全てに字幕が付記されている。

 

英語は「表音文字」なので、日本人は英語表記を見て、ある程度、発音はできる。しかし、単語の「意味」を知らなければ、英文全体の意味は分からないことになる。英語番組コンテンツを視聴する際も、学習者であれば意味の分かる単語も多い。さらに、Hurricane Irma(ハリケーン・イルマ)など時事キーワードは、日本でも外来語として既に知られている英単語と、固有名詞の組み合わせなので認識しやすい。

 

その一方で、重要なキーワードなどが一般名詞で出現した場合(advocate/主唱者、vulnerable/脆弱な、など)は、辞書等で意味を関連づけていかねばならない。中華圏の番組は、音声だけを聞いても、中国語学習者ですら意味が分からないという現象が発生する。それは中国語が「表意文字」であり、新出の固有名詞も、漢字から発音に置き換わっているためである。それ故、新出発音が「何のことを言っているのか」を文字表記で確認する作業が必要となるのだ。中国語番組には画面下方に字幕が付記されるので、それが確認できる。日本人も中国語発音の意味それ自体は分からなくても、漢字表記を意味として一定程度理解できるので、表記としての中国語には苦しまない。しかし、発音との照合が難点である。

 

これらのことから、「アメリカに2年間在住して英語が理解できるようになる」「中国に2年間在住しても中国語が理解できるようになるとは限らない」という定説もまかり通る。欧米圏は、英語発音の世界なので、受動的に住んでいるだけでも表音文字としての英語が入ってくるようになる。意味との照合は必要だが、分量は多くない。中華圏は、表意文字の世界なので、街なかで繰り広げられる会話の「表記での解釈」が必要となる。この解釈作業を怠っても、日本人は漢字を視覚的に理解できるので、街の看板は理解できるし、店頭でのコミュニケーションも指差しや筆談などで対処し、生活に困難が生じることは少ない。しかし、解釈作業を怠って過ごした場合、中国語の「音声」としての認識ができないままで、「中国に在住して数年経っても中国語が聞き取れない、話せない」という事態が生まれる。

 

日本人学習者にとって、表意文字と表音文字の違いをわきまえておくことで、視聴方法や学習方法の要所が掴見やすい。英語は、「語句の記憶や暗記」が主体になり、中国語は「漢字の発音置き換え」を主体としていく必要がある。

 

(取材:亜細亜 渡)

 

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