アジア<QBCアジア支局だより>海外テレビ番組コンテンツを「教育」「旅行」に活用すべし
9月18日、ドラマアワードの最高峰「エミー賞」の受賞作品が発表され、ドラマシリーズ作品賞に「ハンドメイド・テール」、コメディシリーズ作品賞に「Veep」が選出された。日本人視聴者にとって、テレビ番組を単なる「娯楽のため」として捉えるのではなく、教材や旅行誘導コンテンツとして活用するのは有益なことである。アジアのみならず、欧米諸国などでも「アニメを見て日本語を覚えた」という若者も少なくない。同様、日本にも数多くの映画、テレビ番組、音楽などの海外言語コンテンツが流入するが、日本社会や業界に於けるそれらの活用はまだまだと言える。
それには主に二つの要因が考えられる。
一点目は、「日本の吹き替え文化」である。映画や番組をテレビ放送する際、民放局では、日本人声優による「吹き替え」が成される。BS局やCS局が発達してからは「原語+字幕」による放映も見られ、映画館やレンタルDVDでも原語で見られる環境が作られたものの、主要メディアである民放局による「吹き替え文化」の影響もあり、日本での外国語浸透率は低い。
二点目は、日本人の「外国語へのアプローチ」の課題である。海外から日本へ流入するコンテンツは、主に英語圏、中華圏、韓国語圏がある。英語圏は洋画、コメディ番組、洋楽、中華圏は映画、韓国語圏は韓流ドラマというところである。しかし、それらの殆どに対し、日本人は原語そのものから理解しておらず、字幕や吹き替えのアシストに依存する傾向にある。この依存度の高さが、日本人の外国語へのアプローチに問題点を生む。テレビメディアの吹き替え文化にも見られるように、日本では、「日本語で一旦、咀嚼しないと流通しない(売れない)」という商業主義があり、(これはある意味、緻密で丁寧な流通業務を行っているといえるが)、一方で日本人の外国語に対するアンテナを堕落させてしまったとも言えるだろう。日本人の語学力不足とされるのは、それ以前の「日本語咀嚼への依存度が高い」ことすら意識が及んでいない日本人の課題に端を発している。多くの日本人が「外国語は難しい」「無理」と諦めている背景には、外国語そのものが流通、浸透しにくい環境も影響する。
こういった課題や問題点を解決するには、日本人に対し、「外国語テレビコンテンツ」を機能的な形で流入させるのも方法のひとつである。特に「教育」「旅行」の局面は、日本人が外国語や外国文化に触れやすく、啓発環境を作りやすい。日本では小学校や中学校から英語を学習する。しかし、文法や基本単語の習得を完了しているはずなのに、「英語アレルギー」が見られるのは、「基本学習」から「実践」への「ブリッジ(橋渡し)段階」での興味持続コンテンツが欠損しているためである。
洋画や洋楽はその欠損を埋める材料となるものの、フィクションやファンタジーも含まれ「現実」のみを描き出しているわけではない。その点、現代ドラマやコメディは現実から乖離し過ぎると現地の視聴者が離れてしまうため、「現実描写」が前提になっており、外国人にとっても「興味持続コンテンツ」として最適である。実際、日本人(或いは、日本メディア)は、映画を表彰する米国「アカデミー賞」に関心は高いが、テレビドラマの表彰舞台「エミー賞」には多くの関心を持たない。また、人は海外旅行で外国語に触れ、海外旅行で日本に来ている外国人から外国語を聞く。中華圏には、多種の「旅行番組」が存在する。台湾や中国大陸を巡る番組を視聴することで、ガイドブックの字面よりもリアルに現地情報を捉えることができる。
こういった点から、テレビ番組コンテンツを、教育や旅行の現場に適応させることは「外国語教育」「情報入手」の側面から有用である。英語圏では、アメリカ社会をパロディなどで風刺したバラエティ番組「Saturday Night Live」(NBCテレビ)、ダイバーシティー化するアメリカ社会の縮図をコメディ形式で描いた「Modern Family」(ABCテレビ)、中華圏のコンテンツでは、台湾人タレントが、台湾のみならず海外を食べ歩く紀行番組「食尚玩家」(台湾TVBS)、中国人若者の価値観が如実に現れるお見合いトーク番組「非誠無擾」(江蘇電視台)が適材と言える。
これらのコンテンツを注視することで、日本人は、米国、中華圏の文化にキャッチアップし、語学的知識を増加させることが可能である。
取材:亜細亜 渡
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