アジア<QBCアジア支局だより>「グルメロケ番組での奇妙なトークを展開?中国テレビ事情」

Posted:2012年09月10日


中国のテレビ局

 

中国テレビ局が行うロケ番組。事前にディレクターから出演者に渡される台本。しかし、内容は簡単な進行表のみで、ロケ進行に伴い、次々と口頭で直される。 日本でも台本手直しはあるが、やり過ぎると、「製作陣の準備不足」としてディレクターが叱責されるため、ある程度仕上がったものが渡される。

中国では、出演者はほぼアドリブ勝負。そのアドリブ勝負の中で試されるのが、話の展開力だ。中国には独特の「表現」「話の展開の仕方」がある。会話でなくても、司会者が料理を見て、食べて、どう展開するか。
時に、日本では耳にしないような「不思議な」展開もある。

浙江省のグルメロケ番組。
豚肉専門のレストラン。茹でた豚トロが出てきた。頬張る女性司会者。
「ワーッ、この豚肉柔らかい。歯が無いおばあさんでも、この肉は噛めますよ?」

歯が無いおばあさんを引き合いに出す。笑いを取ろうとしているのではなく、真剣に例えた結果。それがカットされずオンエアもされている。

別の番組。
司会者A、Bの会話
A「このミルクティー、薄味で美味しい!」
B「でも正真正銘の紅茶は、甘くて味も濃いんです」
A「やっぱり、この紅茶は甘くなくて飲みやすいですね」

お互いの会話内容は噛み合っていない。それぞれが自分の言いたいことだけを言っている。にも関わらずそれらしく聞こえるのは、テンポが良く、雰囲気がなん となく出来上がっているからだ。また、中国のキッチン番組では、司会者が、自分の「味の好み」について露骨に表現するシーンもある。「奇妙」と感じるのは 外国人だけで、中国では不思議なことではない。

評判の高い四川省の火鍋店。コンロが壊れていて、レポーター達は1時間半待たされる。壊れたコンロの映像、待たされているシーン、司会者が不満を言うシーン、その全てが放送。

男、女、両司会者の会話
女「なぜ、こんな厨房の壊れた店にわざわざ連れて来たの!?」
男「でも味は美味しいよ」

「味は美味しい」ということで男司会者はフォローに入るが、『壊れたコンロ』、『1時間半待たされた』というシーンを放送していることで、店にとってはマ イナス面も強い。「アポなし取材」という演出をしたいために、あえて、店のマイナス部分もカットしなかったのだろうが、日本のグルメ番組では、あり得ない 編集だろう。

日本でも中国でも、ある場所を紹介する際、少々のハプニング、マイナス面(『店が早く閉まる』、『この日は客が多く席がないので特設席で撮影』のような設 定)は作るとしても、店にとって致命的な打撃を与えることはない。しかし、中国では「容赦ない」部分がある。『壊れた厨房で営業』、『1時間半待たされ た』という暴露は、仮に「味の良さ」を出してフォローしたところで日本ではシャレでは済まされないかもしれない。日本人にとっては奇妙に思える部分もある が、国が違えば番組制作上の価値観の違いも存在する。

【アジア支局:亜細亜渡】


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